17. みそ(味噌)づくりに挑戦
〜 "手前みそ"、果たしてできるだろうか? 〜
あなたは
人目のお客さんです
◆ 田舎の手づくり味噌がたべたくて
田舎育ちの私は、昔のしょっぱい大根やナスの味噌漬けの味が忘れられない。
自家製で、2,3年も寝かせたみそ樽から取り出して味わう独特のあの風味は、なじんだ味噌汁の味とともに懐かしさがよみがえってくる。決してスーパーで買い求めて味わえる味ではない。 そんな昔の懐かしい味を思い出していた時、長岡市の市政だよりに味噌作りの体験講習会のあることを知って早速申し込んだ。60の手習い。何事も経験と割り切り多少恥ずかしさもあったが決心した。 昔、田舎ではどこでも自家製の味噌だった。毎年春先、庭に味噌豆を煮るかまどつきの大きな釜がすえられ大人たちの手で豆が煮られ、煮あがると手回しのすりつぶし機で豆をすりつぶしていく。いつも手回しは子供たちの仕事だったことを覚えている。もう何十年も昔の話だ。
長岡市のふるさと体験農業センター
◆ 麹づくりに精を出す
長かった冬も、彼岸に入れば暖かさが増す。暖かな3月18日、長岡市の郊外にあるふるさと体験農業センターに第一日目を迎えた。
大豆10sコースで、今日から3日間の講習である。参加者は13人。うち男性は3人。やっぱり少数派だった。周りはまだ1m50以上の雪の壁で埋まっていた。 まずは、指導にしたがって前日から一晩10sの米を水に浸し持参。これを5kごとにざるにとり、セイロ(蒸篭)に移して2ケごと(10s)をいっぺんに蒸し、炊き上がった米に麹菌をまぶす。いわゆる麹づくりであった。あつあつの米を素早く人肌の温度に冷まさせ、そこにしっかり麹菌を混ぜ合わせるのがコツ。米は堅めに蒸してある。麹菌は10sに対して僅か20rをまぶすのである。大型のごはんしゃもじを片手に、両側から扇風機の風を受けて素早く冷まさせ、その後両手でしっかりまぶしあげる。汗びしょりになりながら、これを10数回くりかえし最後に長持ちのような密封のムロに収めて終了。13人分をほぼ半日を要して完了した。はたして満足に麹が出来上がるのだろうか。
◆ 驚きの麹菌の力、一晩で白く発酵
二日目は、麹の切り返し作業だった。
一晩ムロに寝かせた米を切り返えしてやって、均等に菌が回ることと、適当な温度調節をはかることで良質な麹の完成をめざすことだと勝手に納得した。この日は、午前と午後の2班に分かれて行った。私は午後の班で、3時から始まった。ムロは横2m、縦1m弱、深さも1mほどはあった。この中に120s、昨日蒸して麹菌をまぶした米が寝かされている。 ふたが開けられると、甘い麹独特のかおりがプーンときた。覆った布を開いたとたん、昨日と打って変わって、白く麹菌が発生して見事に麹になりつつある姿があった。10sの米に対して、僅か20rの麹菌が一晩のうちにここまで変容を遂げるとは……。麹菌の偉大な力にびっくりした。 切り返しは、下側の麹を上側のものとを入れ替える作業であった。ムロを縦半分に区切り、まず左側に、右の麹を上段と下段に分けて積上げておいてその後、上段のものを下側に敷き詰め、その上に下段のものを上側に敷き詰めるやり方であった。この時、団子状の塊をていねいに粒状にほぐしてやるのである。左側も同様に行って作業は終了した。上下満遍なく白く発酵が進んでいて、麹の出来上がり具合は上々のようであった。 ここの講習では大豆10sに、麹10sを混ぜ合わせてつくるやり方であり、かなり麹の度合いが高くおいしさも市販品以上との評判だという。出来上がり上々のこの手作り麹ならきっと抜群のおいしい味噌ができそうだ。
仕込み用大豆ー水洗いして一晩浸す
大豆と麹・塩を攪拌
◆ 蒸して、挽いて、練り上げ、塩・麹攪拌して仕込み完成
最終日の三日目は、いよいよ本番。午前9時にメンバー全員スタンバイ。
実習場には仕込み用の、昨日メンバーで水洗いし、一晩浸した大豆が5kづつザルにとって整然と並べられていた。その数実に24ケ。これを、@1袋10sに収めた布袋3ケを一度に大型圧力蒸し器で蒸しあげる、A蒸した大豆を10sづつ電動つぶし機でつぶす、Bつぶした大豆を素早く攪拌して人肌程度に冷ます。C攪拌機にあらかじめ分量調合して塩と麹を攪拌している中へ、ころあいを見て大豆を投入、十分練り上げて味噌玉様になったところでできあがり。ざっとこのような工程を繰り返すのである。 13人のメンバーが工程のそれぞれの持ち場について、次々と蒸しあがってくる大豆を加工して次に引き渡していく。この繰り返しを12回も続けたら結構いい仕事となった。でも自分で自分の味噌をつくって賞味できると思うと楽しいものだ。わきあいあいのうちに力仕事は完了した。最後は、練り上げて味噌玉様になったところを10s分づつ思い思いの容器収め完成。大豆10s分は米10sと合わさり、その上、浸しと蒸しが加わって2倍の40gの大容量となった。
◆ ”手前みそ”完成するか?果報は寝かせて待とう
じっくり熟成を待つ自家製みそ
写真のごとく仕込んで40gにもなった樽は、いまじっくりと寝かせ、熟成を待っている。
たっぷりの自前の麹をふくんでこれから活発に発酵していくだろう。6月と10月ごろに切り返えしをやれば、11月には味見ができるという。はたしてうまくいくのだろうか。 ふるさとの味噌漬けとみそ汁の味が忘れられず、思いがけず自家製味噌作りにはまった。還暦を過ぎてはじめて家庭に役に立つような真似ごとを経験してみた。男性の人もよく学びにきているという。他に豆腐作りや、ハム・ベーコン作りもあるとか。やってみると結構面白い。 まずは、この秋まで楽しみに待とう。果報は寝かせて待つことにしよう。
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